シリーズ『吟醸』その(2)
2008.03.31 21:10|naoko@kisoji|
えっと、30日(日)は蔵の仕事もお休み。
と言うわけで、少し遠いですが上田の沓掛酒造へ行ってまいりました。
なぜかと言うと、沓掛酒造の山崎杜氏はうちの杜氏と兄弟弟子で、
小谷村の自宅もうちの杜氏のすぐお隣で、
また、沓掛酒造のお頭さんはうちのお頭のお兄さんで…なんていうご縁で、
かわいがっていただいているので、図々しくご教授いただこうと。
うちの杜氏は『純米造りと吟醸造りでは土俵が違う』と言うポリシーで、
吟醸に対してはそれ程執着していないと言うか、
昔から吟醸の世界にいる杜氏さん方々と比べれば、
やはり吟醸は苦手分野であると言うか…。
とにかく、前回にも書いたように、うちの蔵は
新酒鑑評会に出品すれば劣等生になってしまうのです。
でもでも、本当に今回は悔しかった。
うちの蔵ながらに、かなり真剣に取り組んだ吟醸でしたが、
『毎年同じ蔵癖が出て、やっぱりダメですね。』なんて、
年々の進歩も感じられないような評価をいただいてしまい…。
============================================================
ただ、今年の吟醸造りを終えて、
私の中では何か物足りなさを感じていたのです。
(蔵中がすっごく真剣に取り組んでいたのに…。)
洗米から蒸米の晒し、製麹の方法、仕込みのタイミング、
様々な行程に於いて、今回の方法がうちの蔵にとって本当に最善の策であったのか。
============================================================
具体的に言えば、まずは酵母の選択。
そして、吸水(洗米)の程度、蒸米の質。
麹を室から出すタイミング。
更には、原点回帰で『清潔さ』、などなどなどなど…。
【酵母】
精査している蔵ではもうすでに去年までの長野酵母は使っていない。
お金をかけてでもより良い酵母を使っている。
→今年使った酵母が本当によかったのか…?
【吸水】
今季の米はよく水を吸った。
→もっともっと洗米時間をシビアに考えなくてはならなかったのでは…?
【洗米・浸漬】
洗米・浸漬をひとつの半切れで行っている。
→洗米した水は取り替えてから浸漬しなくてはならなかったのでは…?
→もとより、もっとしっかり洗米しなくてはならなかったのでは…?
【麹】
吟醸用の麹にしては、破精(はぜ)込み(麹菌糸の食い込み)が良かった。
→もっと乾燥させてもよいのでは…?
→酵素力価のバランスが悪かったのでは…?
→そもそもの製麹方法を改善すべきなのでは…?
【清潔さ】
もちろん手洗い励行ではあるが、不十分さを感じる。
→壁や床、器具等の消毒はどの程度が適当なのか…?
→今の心掛けでは不十分なのか…?
============================================================
それぞれ、私の中では初めて気がついたことばかりです。
今年の吟醸造りを見ていて疑問に感じていたことを、
昨日山崎杜氏に質問としてぶつけてみたのです。
そうしたら、やはり私が疑問に感じていたことがそれなりに指摘されたのです。
ってことは、それらを改善すればよりよい吟醸造りを実現できるのかも。
もちろん、山崎杜氏の技術がうちの蔵でも正しいとは限りません。
環境が違えば、水も違うし、技術者自身が違うので。
(だからこそ、様々な地酒があって然るべきなのですが。)
でもでも、今うちの蔵で吟醸として結果が出せていないのであれば、
盗み取ってでも実行してみるべきことは山ほどあるのだと思います。
今季、去年までの考えとほぼ180度変わったことがいくつかあります。
◇長野県/全国新酒鑑評会に出品する限りは、その土俵で勝負できる酒を出すべきである。
(去年まではとりあえず出品していた感がある。)
(鑑評会の評価方法にそぐわないので、受賞できなくても仕方ないだろうと考えていた。)
◇鑑評会の評価方法には多少の疑問は残るが、
味にふくらみがあり且つ無駄のない酒が評価されている。
(ただ綺麗であれば評価されると勘違いしていた。)
◇いい吟醸が造れる技術者はいい純米も造れる。
(純米造りと吟醸造りは正反対だと思っていた。)
来季の造りでは徹底的に改善点を洗い出し、
これまでのやり方が良いのであれば、それをもっと追求し、
少しでもいい吟醸造りに近づければと思っています。
で、うまくいけば純米吟醸で出品できるまでに研鑽したいと思います。
私ひとりの力ではまだまだ遠い夢のような話ですが、
杜氏や頭と同じ気持ちを共有することが出来そうなのです。
アル添すれば、酸味や雑味も薄まるので、
多少味が多くなったとしてもまだアル添で救済できる可能性があります。
でも純米酒と言うのは、醪の状態での真っ向勝負になります。
醪から上槽後まで、何一つ手を加えることが出来ないのです。
と言うことは、本当に醪で最善の状態でなければならないということなのです。
ってことは、やっぱり米を溶かしすぎず、
雑味を出さない酒を目指したいものなのです。
でも、それって薄っぺらい酒と紙一重なんですよね。
そこが、すっごく難しいところなんだと思います。
キレのある酒を目指せば、味気のない酒になってしまい。
ふくらみのある味わいを目指せば、味が多すぎてしまい。
香りを抑えようと思えば、なくなりすぎてしまい。
酸味と甘味のバランスを取ろうとすれば、どちらかが浮いてしまい。
だけれども、うちの蔵としての個性は失いたくない。
在り来たりの酒は造りたくない。
ま、とにかく一筋縄ではいかないってことですね。酒造り。
今季が終わっても、私なんてまだまだ3回しか酒造りをしていません。
3回ですよ。
こんなに色んなことを感じ取れたと思っていても、たった3回。
未熟者もいいところです。
でも、今回山崎杜氏の言葉に、自信に溢れる目に感動した。
そして、背筋がピンと張った。
『自分が本当に求めている酒を自分で造れてこそ、本当の技術者である。』
わたし、いつになったら本当の技術者になれるんだろう。
まだまだ高望みではありますが、
『目標は大きく。失敗も大きく。その分前進も大きく。』
さぁ、いってみよぉ!!!
◇◇◇出る杭は打たれるが、出すぎた杭は打たれない◇◇◇
◇◇◇帰りに立ち寄った酒販店さんの心強い言葉です◇◇◇
◇◇◇今だからできること、今しか出来ないこと◇◇◇
◇◇◇失敗は多いだろうけど、失敗は成功以上に自分を成長させてくれると思う◇◇◇
◇◇◇(((((人気blogランキング)))))参加中です!!! ◇◇◇
と言うわけで、少し遠いですが上田の沓掛酒造へ行ってまいりました。
なぜかと言うと、沓掛酒造の山崎杜氏はうちの杜氏と兄弟弟子で、
小谷村の自宅もうちの杜氏のすぐお隣で、
また、沓掛酒造のお頭さんはうちのお頭のお兄さんで…なんていうご縁で、
かわいがっていただいているので、図々しくご教授いただこうと。
うちの杜氏は『純米造りと吟醸造りでは土俵が違う』と言うポリシーで、
吟醸に対してはそれ程執着していないと言うか、
昔から吟醸の世界にいる杜氏さん方々と比べれば、
やはり吟醸は苦手分野であると言うか…。
とにかく、前回にも書いたように、うちの蔵は
新酒鑑評会に出品すれば劣等生になってしまうのです。
でもでも、本当に今回は悔しかった。
うちの蔵ながらに、かなり真剣に取り組んだ吟醸でしたが、
『毎年同じ蔵癖が出て、やっぱりダメですね。』なんて、
年々の進歩も感じられないような評価をいただいてしまい…。
============================================================
ただ、今年の吟醸造りを終えて、
私の中では何か物足りなさを感じていたのです。
(蔵中がすっごく真剣に取り組んでいたのに…。)
洗米から蒸米の晒し、製麹の方法、仕込みのタイミング、
様々な行程に於いて、今回の方法がうちの蔵にとって本当に最善の策であったのか。
============================================================
具体的に言えば、まずは酵母の選択。
そして、吸水(洗米)の程度、蒸米の質。
麹を室から出すタイミング。
更には、原点回帰で『清潔さ』、などなどなどなど…。
【酵母】
精査している蔵ではもうすでに去年までの長野酵母は使っていない。
お金をかけてでもより良い酵母を使っている。
→今年使った酵母が本当によかったのか…?
【吸水】
今季の米はよく水を吸った。
→もっともっと洗米時間をシビアに考えなくてはならなかったのでは…?
【洗米・浸漬】
洗米・浸漬をひとつの半切れで行っている。
→洗米した水は取り替えてから浸漬しなくてはならなかったのでは…?
→もとより、もっとしっかり洗米しなくてはならなかったのでは…?
【麹】
吟醸用の麹にしては、破精(はぜ)込み(麹菌糸の食い込み)が良かった。
→もっと乾燥させてもよいのでは…?
→酵素力価のバランスが悪かったのでは…?
→そもそもの製麹方法を改善すべきなのでは…?
【清潔さ】
もちろん手洗い励行ではあるが、不十分さを感じる。
→壁や床、器具等の消毒はどの程度が適当なのか…?
→今の心掛けでは不十分なのか…?
============================================================
それぞれ、私の中では初めて気がついたことばかりです。
今年の吟醸造りを見ていて疑問に感じていたことを、
昨日山崎杜氏に質問としてぶつけてみたのです。
そうしたら、やはり私が疑問に感じていたことがそれなりに指摘されたのです。
ってことは、それらを改善すればよりよい吟醸造りを実現できるのかも。
もちろん、山崎杜氏の技術がうちの蔵でも正しいとは限りません。
環境が違えば、水も違うし、技術者自身が違うので。
(だからこそ、様々な地酒があって然るべきなのですが。)
でもでも、今うちの蔵で吟醸として結果が出せていないのであれば、
盗み取ってでも実行してみるべきことは山ほどあるのだと思います。
今季、去年までの考えとほぼ180度変わったことがいくつかあります。
◇長野県/全国新酒鑑評会に出品する限りは、その土俵で勝負できる酒を出すべきである。
(去年まではとりあえず出品していた感がある。)
(鑑評会の評価方法にそぐわないので、受賞できなくても仕方ないだろうと考えていた。)
◇鑑評会の評価方法には多少の疑問は残るが、
味にふくらみがあり且つ無駄のない酒が評価されている。
(ただ綺麗であれば評価されると勘違いしていた。)
◇いい吟醸が造れる技術者はいい純米も造れる。
(純米造りと吟醸造りは正反対だと思っていた。)
来季の造りでは徹底的に改善点を洗い出し、
これまでのやり方が良いのであれば、それをもっと追求し、
少しでもいい吟醸造りに近づければと思っています。
で、うまくいけば純米吟醸で出品できるまでに研鑽したいと思います。
私ひとりの力ではまだまだ遠い夢のような話ですが、
杜氏や頭と同じ気持ちを共有することが出来そうなのです。
アル添すれば、酸味や雑味も薄まるので、
多少味が多くなったとしてもまだアル添で救済できる可能性があります。
でも純米酒と言うのは、醪の状態での真っ向勝負になります。
醪から上槽後まで、何一つ手を加えることが出来ないのです。
と言うことは、本当に醪で最善の状態でなければならないということなのです。
ってことは、やっぱり米を溶かしすぎず、
雑味を出さない酒を目指したいものなのです。
でも、それって薄っぺらい酒と紙一重なんですよね。
そこが、すっごく難しいところなんだと思います。
キレのある酒を目指せば、味気のない酒になってしまい。
ふくらみのある味わいを目指せば、味が多すぎてしまい。
香りを抑えようと思えば、なくなりすぎてしまい。
酸味と甘味のバランスを取ろうとすれば、どちらかが浮いてしまい。
だけれども、うちの蔵としての個性は失いたくない。
在り来たりの酒は造りたくない。
ま、とにかく一筋縄ではいかないってことですね。酒造り。
今季が終わっても、私なんてまだまだ3回しか酒造りをしていません。
3回ですよ。
こんなに色んなことを感じ取れたと思っていても、たった3回。
未熟者もいいところです。
でも、今回山崎杜氏の言葉に、自信に溢れる目に感動した。
そして、背筋がピンと張った。
『自分が本当に求めている酒を自分で造れてこそ、本当の技術者である。』
わたし、いつになったら本当の技術者になれるんだろう。
まだまだ高望みではありますが、
『目標は大きく。失敗も大きく。その分前進も大きく。』
さぁ、いってみよぉ!!!
◇◇◇出る杭は打たれるが、出すぎた杭は打たれない◇◇◇
◇◇◇帰りに立ち寄った酒販店さんの心強い言葉です◇◇◇
◇◇◇今だからできること、今しか出来ないこと◇◇◇
◇◇◇失敗は多いだろうけど、失敗は成功以上に自分を成長させてくれると思う◇◇◇
◇◇◇(((((人気blogランキング)))))参加中です!!! ◇◇◇