湯川酒造店に私が入社したのが2005年10月。
すなわち、酒造りを始めて10年目になります。
当時は責任のある仕事があったわけでもなく、
結構時間がありました。
ラベル貼りや瓶詰めって言う、季節問わない日常業務から、
酒造りが始まれば、蔵の仕事はもちろん洗い場から。
毎日米は蒸かされて仕込みは続くんだけど、
何がなんやらわからないウチにお酒がしぼられているわけです。
なんとなく過ごしていたら、
全てが自分と関係ないところで完結していて、
意識して突っ込んでいかないと、
自分の洗い場の仕事と酒造りを関連付けられないまま終わるんですね。
当時、私自身が会社にとって余剰人員でしたし、
自分の洗い物が済めば、指示された仕事が済めば、
時間だけはいくらでもあったんです。
やりたいこともたくさんあったし、
改革もたくさんしたかったけど、
最初は現状を把握することと、
酒造りの中での自分の存在意義を獲得したかった。
で、酒造期に私がやったこと、それは、
まず麹室を徹底的に綺麗にすること、だったのです。
掃除はもちろんですが、
麹室で使用されている布をキチンと畳むこと。
これを徹底して行ったわけです。
なぜか。
綺麗で整っていることが気持ちいいから。
そして、麹室の掃除や整理を言い訳に、
麹を見て観察することができるから。
まぁ、理由はともあれ、
布を毎日毎日、とにかくピシッと畳むんです。
何枚もありますから、重ねて置かれるのですが、
シワのひとつも許せなかったんですね。
これって、時間が使えたお陰なんです。
いまでこそ、そこまで時間を費やせなくなりましたが、
短時間でピシッと綺麗に!できるようになっています。
もちろん、麹室だけではなく、
蔵や事務所や出荷場、あらゆるところの整理整頓を実行しました。
そうすることで仕事も気持ちがいいし、
効率も上がりますね。
今、新人社員が2名います。
きっと日常的に自分の仕事と酒造りの関連性が、
イマイチ掴めないでいるかもしれません。
ですが、興味を持つこと、質問することはとても大切です。
そして、これだけは我が仕事!と胸を張れる仕事を作るべきです。
人を育てるのは非常に難しい。
個性もあるし、得て不得手もある。
入社の動機によっても違う。
ホウレンソウ(報告、連絡、相談)は大切です。
しかし、ある一定に満たないことに関しては、
自己判断が大切になりますね。
自分で気づく、自ら得ようとする、学ぶ。
仕事ってもんは、人から与えられては成長しません。
私が当社の新入社員だった頃。
「見て学べ」と、そう言われて戸惑いました。
しかしそれは「何でも聞いてこい」と、言い換えられるのです。
質問と応えの応酬でベテラン杜氏を打ちのめす程、
質問攻めにするわけです。
聞かなくては、何も得られないから。
全てを0から100まで教えるのは簡単です。
必要なこと、例えば作業のやり方などは教えます。
しかし、その意味やそれぞれの関連性は教えません。
自ら考えるべきであり、それにより自ら学ぶことができるから。
当社は放置プレイ。
監督はしますが。
仕事の意味を考えるとで、
ひとつひとつの作業に問い掛けを行うことで、
とにかく自ら考えるべきことは聞く前に考える。
それが当社のやり方です。
その中で、私たち育てる側も一緒に成長できるわけですね。
先にも書きましたが、日々の仕事と酒造りの関連性を
掴めるようになるにはそれなりの時間が必要ですね。
私もそんな時があったなーと、
ようやく10年目になる酒造りの、初心を振り返るのでした。

酒造りによって、経営に対する考えが構築されていくんだな。